2007 11.16 Fri 寝起きとか。 ＣＡＴＥＧＯＲＹ ：BACCANO!

フロイトに聞く


朝、ソファで目を覚ました。
昨晩はクレアとフィーロが遊びに来ていたので久しぶりにポーカーをしながらバカバカしい話をし、呑んでいた。そのまま、事務所のリビングのソファで眠っていたらしい。

そして驚いた。



子供ではあるまいし

目が覚めたら泣いていた。

見ていた夢はもうおぼろげにしか覚えていないが、ただ酷く昏かったような気がする。昔おびえていた詩のように、昔おびえていた死のように。

大人になって随分たつが、本能的にいまだに死というものは恐ろしいらしい。

もう、死という絶対的な存在に怯えずともいいのに。

『人間それほど早くは環境に順応出来ないものですね』


それから備え付けの洗面所でシャワーを浴び顔を洗い、髪をセットしてから、応接間へ行くとすでにキー兄がいつもの仏頂面でいた。

『おはようございます、キー兄』

何事もなかったように、いつものように挨拶をする。肉親に対してまで敬語を使ってしまうのはもう癖以外のなんでもない。クレアにはいまだに『他人行儀みたいだからその敬語いい加減やめろよ』といわれるが、染み付いた癖というものはなかなか取れない。

『今日は早いですね。何かあったんですか？』

眠気覚ましにコーヒーを入れながら聞く。

『…昨日、ヴェルレーヌの店の経理報告を整理し忘れてな。』

『珍しいですね。キー兄がミスするなんて』

『ああ。』

当たり障りの無い話。いつもと変わらず、自分が話し、キー兄が相槌を打つ。いつもと、同じ。

『大丈夫か？』

唐突に話が飛んだ。一瞬キー兄が何を言っているのか解らず振り向いた。

自分を見る、いつもと変わらない、仏頂面。瞳だけが揺れている。ゆらゆらと。

苦笑しながら、

『なんで』

どうしてだろう、

『なんで解るんですか？キー兄』

『昨夜、クレアが電話してきた。お前が随分うなされていた、と』

あの幼馴染は。気づいていたのなら起こしてくれればいいものを。

『お前は小さい頃、時々怖い夢を見て泣いていた。朝は決まってそんな顔をしていた』

そのときの己は随分と間抜けな顔をしていただろう。随分と昔のことをよく覚えているものだ。そして、適わない。永遠の一生の中で、きっとこの兄には永遠に適わないな、と再確認してしまった。

クスと笑って、

『大丈夫ですよ、もう子供でもありません。感情の処理の仕方は学んでます。』

そういうと、“そうか”と一言だけ呟き、キー兄は書類に目を落とした。

フロイトに聞く。

夢がどうであろうと、用は、己の心の持ちようだ。どうにでもなる。


『そうだ、キー兄。この事はベル兄には言わないでくださいよ。からかわれるのは嫌ですからね』

笑いながら言う。


間をおいて、キー兄には珍しく笑みを含みながら、



『………クレアとフィーロには言ってもいいのか』


思いもかけない言葉が返ってきてしまった。




＊あとがき
慣れない事はするもんじゃないね！キー兄しゃべりすぎ！！実はラストのオチが書きたいが為に書きました。小説書いたの初めてだよ！！若干（どころではなく）フロイトの使い方間違ってますが、気にしないで下さい。たぶんこの時代にはすでにフロイトさん有名人だと思います。亡くなる直前だしー、ラック本好きそうだしー…　た　ぶ　ん　…
夢っつーたらフロイトしか思いつかなかった！！